努力を最大化する上達戦略
どうも、編集長のKouと申します。当然ですが的に当てる、的中率を安定させる、強くなる、射品を求める、どんな目的であっても練習のやり方があります。
今回は「上手い人や的中率が高い人はどう考えて練習しているのか?」という疑問の答えを探っていきます。
上達しないと思っている方も必ず弓道上達の極意をつかんでいってもらいたいと思っております。
このテーマは当サイトの根幹となる重要事項になります。三章構成でまとめていきましょう。
一章 成長の条件と誤解で上達における才能とそれを妨げる要因について議論し
二章 上達における三時期と時期に適する指導で成長の全体像を確認します。
そして三章 上達の知恵と仕掛けを目標設定と練習思考を詳しく紹介します。
上達の極意は知恵と仕掛け
弓道上達法則の答えはまさに「知恵と仕掛け」でしょう。
実のところ、上達する術は仕掛けがあるというわけです。上達はその手法の知識を手に入れること、そして知恵を使うことで格段に期間対効果が違ってきます。
まずは今回、上達について取るべき立場とよく見る勘違いについて理解して頂きましょう。
▼目次
1.才能に対する大きな誤解
1-2.人生の時間配分について考える
2.意志と成長を妨げる三大間違い
3.間違った選択をしないために
さて、読者の皆さんも上達のために日々練習し、研鑽されていることでありましょう。
あなたが今、弓道に時間を割いているのはそれぞれ経緯があってのことに違いありません。それぞれの弓道があって素晴らしいと思います。
また同時に、趣味であっても学校の部活であっても、人生と同じくらい大事であっても、できる限り上達したいと思っていることでしょう。「いくら遊びでも万年初心者では続かないし、つまらない。」と思うでしょう。やるからには上達したいし、しかも最短距離でやりたいと思うのが人間の性というものです。
「そうは言っても射法は多彩を極め、正解があるとは言えない。」と、多くの方は思うでしょうしこの言葉が上達を害していると考える人も多いかと思います。
また人は自分に「センスがないから」「得意不得意がある」「量より質だ」「練習を続けていればいつかできる」「下手だから」「射癖がしみついてるから」「自分は上達が遅い」とかできない理由をつけては自分を納得させがちです。
心理学においてこのような「合理化」は人間の特徴であり、否認の一種であり防衛のひとつであります。満たされなかった欲求に対して、理論化して考えることにより自分を納得させることに人間は長けてしまっています。特に「自分には素質や才能がないから難しい」という考えはよく耳にします。
しかし実はこれが上達を阻む大きな壁だということ。この事実をまず分かってもらわなくてはなりません。
自分も結構やりがちで常々反省していますが、人間としてのクセなのだからその都度反省していく他ありません。
才能に対する大きな誤解
多くの人たちの「才能」に対する大きな誤解を解くことから始めましょう。
ほとんどの人は才能は運良く生まれつき与えられた「努力をせずに結果を得られる能力」のことだと思っていることがまず誤解になります。
それはなぜか。我々は昔と違って情報技術が発達した社会で、他人の成果を身近に感じられるようになっています。特にスポーツの世界では大々的に報道されがちです。
しかしどんなサクセスストーリーでも、ひたすら練習する姿を描いたって売れはしません。読み物でも既に能力がある人物を主人公に書いた方が爽快で人の心を楽しませるので地道な練習は描かれることはないのです。
また、努力してきた人はその苦労をあまり詳細に語ったりはしません。
そのようにして結果だけを見せられ続けることで才能さえあれば何の苦労もなしに結果がついてくる人が居るように思えてきます。
それゆえに彼らが特別な才能を持ち、自分とは別種の超人として産まれたと誤解してしまうわけです。
あるいは、自分もある分野で同じように才能を持ち、いつか続けていれば経験を積んで開花するだろうと期待しています。どこかで人生に魔法がかかるのを期待しているわけです。
しかし、多くの達人たちを調べた研究によって明らかになった「一流と二流と違う点」、それははたった一つでした。
質の高い練習を途方もない時間積み重ねていたか否か。
例外的に練習時間が少ないにもかかわらず実力が突出した者は一人も居なかった。
すべての結果には必ず突出した練習量があったことは間違いない。
いわゆる達人たち、分野の最先端を切り開いてきた人は才能や素質に恵まれた天才ではありませんでした。
一流になるのに必須な条件として皆が思っているほど生まれつきの素質の影響は大きくないということ。
一流になるために必要なのは天賦の才でも長年の経験でも本や動画を見て分かった気になることでもありません。
ここで我々が取るべき立場は「知恵に根差した実行至上主義」であります。
逆に言えば、私たち皆が一流になるための「適応する」という巨大な能力を持っています。ここから三章を通して、我々が開花させるべき能力とはこの人間が持つ「適応と学習の能力」を指します。
天才神話が終わった世界で人生の時間配分について考える
さらにもうひとつ陥りがちな思考があります。『自分には時間があると思ってしまうこと』というもの。
人の平均寿命は78年(健康寿命はもっと短い)
睡眠:28.3年
仕事:10.5年
SNSやTV:9年
通勤に:1.3年 教育:3.5年 食事や身支度,買い物,家事:16.5年、残るのは"9年=80000時間弱"
40歳までに40000時間しかない。
「時間は平等。それに限りがある。寄り道するヒマはない。」
だからこそ、もう一度考え直してほしいというわけです。熟達した技術を裏付けているのは生まれながらの素質ではなく、継続した膨大な量の練習でした。他人の人生を生きるには短すぎるのです。
そしてほとんどの分野でエキスパートになるには10年以上の継続した訓練が必要だとよく知られています。(一流を期待されるバイオリン奏者は18歳までに7400時間もの期間練習を積んでいたし、国際賞を取る30代の奏者は二万~二万五千時間でした。)
思考のクセを取り払って本当に自分がやりたいことが何なのか考えて欲しい。
本当にやりたいなら才能がなかろうがお金がなかろうが周りが騒ごうが挑戦してみよ。
もう遅いなどということはない、あなたがこれからの一生涯の中で一番時間が残されているのは間違いなく今なのだ。
問おう。あなたはどうなりたいのかと。
意志と成長を妨げる三大間違い
①才能がある人には勝てない
②今からでは手遅れだ。中学からやってる人達には勝てない
③環境が良くないと上達できない。教えてくれる人がいなければ上達はできない
皆当たり前のようにこのような迷信を使い、自分の成長を止めてしまっています。
この名言(迷言)たちにおいて人間が陥りやすい誤りを説明していきます。
①才能がある人には勝てない
高校卒業までに才能の開花がみられないと皆あきらめてしまう傾向にあります。
ですが、高校生で輝かしい結果を残していることは少なく、あったとしても、その人はかなりの努力を重ねている人が多いです。
なぜなら才能の開花には知恵に根ざした練習時間が必要だからです。そういった人達は高校生になるずっと前から練習を重ねています。
ということは中学高校の三年間、ましてや初心者の段階で自分に才能が無いと決めつけるのは早計に違いありません。
できない自分にガッカリする必要なんかないのです。
初心者のうちについた差がずっと続くと思っているならそれは間違いです。
例えばチェスではIQが低く、最初の飲み込みが悪くても後に続けていくとIQが低い方が実力が勝るという結果が出た研究もあります。
遺伝子によるものだと決めつけてはいけません。天才は居ないのです。双子は全く同じ人生を送っているでしょうか?
今日から考え直し、どんな偉人や無敵の選手でも君と同じ人間だと認識しましょう。
上達は難しいことでも、自分には出来ないと思うほどのことではないのです。
②今からじゃもう遅い、小さい頃からやってる人達には勝てない
一部の分野ではこれは成り立つでしょう。子供の頃から手に入れなくてはならない身長や体格のようなタレント的能力も存在します。絶対に追いつけない部分もあるでしょう。
しかし他の分野では大人になってからでも習得できる技術も多いと言われています。
32歳で絶対音感を習得した人が居るくらい適応の能力は大人になっても衰えないのです。
ましてや早くても中学からしか始められない弓道は幼少期からのアドバンテージは少ないと言えます。
また、小さい頃は身体も精神も未熟で理解力も浅く、できることが限られているため、上達にも限界があります。
上達するには発育に応じたステップを踏まなくてはならないため、自ずと時間を掛けても頭打ちになってしまうわけです。
もちろん幼いころからやっていれば先手は打てるでしょうが、20歳からでも1日10時間やれば3年で抜き去ってしまう可能性もありうるわけです。
ある競技一筋であった人が他の競技から参入した人とライバルになるなんてことは良くありがちなことで、これは他の分野でも訓練を積んでいれば他の分野で芽を出す可能性だってあるということになります。
小さいときにやっていた競技が別のものであっても上達手順と獲得した一部のことは他競技に移ったときに引き継いで使うことが出来ます。その上、心理的能力であれば30代40代になっても衰えないと言われています。
つまり、何万時間もの練習を積まない限り自分に才能があるかどうかなんて分かりはしないわけです。
質の高い練習を10年続けられないなら上達の完成は無い。
10年続けられることを全力でやろう。続けることに対して得られる物が無価値だと思うならば別の分野に移ることを勧める。人生は短い。
本当にやりたいことに時間を費やしなさい。
(加えて、そもそも①②の迷信において勝つ負けるといった意識が本当は間違っているが、ここでは言及しません。)
③環境がないと上達できない。
これも間違いになります。不足した施設は工夫を産み、思いも寄らないところから発想が舞い降りるのです。ものがないからこそ工夫し、そこから新しい物が生まれます。
これが創造力の原点であり、人間は足りている処に物は作らないものです。「この環境では自分の実力はこんなもの」と思ってしまうのはもったいないのです。
まずは在るもので最大限できることをやってみよ。
それが持ち味になり次のステップへの道が見える。環境が変えられるようになるのだ。
後の章で上達の仕組みを知ってしまえばとても自然なことだと思えるようになるはずだ。
師は教えられる準備ができた時に現れる
古くからある仏教から出た言葉ですがこれはもうお分かりでしょう。
師に全てを手取り足取り指導してもらえばいいというものではありません。環境と同じく、足りないところから工夫は生まれるのです。
多くを語らない師に不平を言うことが極めて無理解なことだと分かりますし、もちろん師匠が同時に5人居る状態も異常だと分かってもらえると思います。
間違った選択をしないために
これらの迷信をやめることでまず第一歩、上達へ近づくことができました。一流を目指さなくともこれは是非とも心がけていきたいことです。
これは統計学の意見ですから、これからの時代、科学の意見で人間は意思決定を楽にできると知っておきたいものです。
我々はどうしても人を見るとき、結果ばかりを気にしてしまいがちです。
それでも、真の輝かしい結果の背景には必ず地道で長い不断の努力があることを忘れないようにしたいものです。
彼らは輝かしい結果を残すために、挑戦し続けてきたのです。時に苦しく、辛い経験をしてきた。だからこそそれを知っている我々は尊い挑戦を笑うのはやめましょう。
誰だって最初は何もできない赤ん坊なのですから。
他の人の芽を摘むようなことはしないよう心がけたいと思うばかりです。
自分と他人を比べて悩むことは上達にとって百害あって一利無しだ。もちろんこれらの迷信を植え付けるような周りの言葉は避けなければならないし、我々もその一助にならないように徹底するべきである。
上達に関する知識を持たずに、あれやこれやと迷信を使ったり野次を入れるのは上達に不利益だ。
誰かが「これをやってみたい」と言ったら、迷うことは無い「YES」だ。挑戦し、一歩前へ出よ。失敗も成功も最高の贈り物になるのだ。
今一度問おう。あなたはどうなりたいのかと。
これで一章は終わりにします。下にSNSボタンがあるので気に入ったら感想をシェアしてみて下さい。とても励みになります。
知恵による実行至上主義の元に自分の手を動かす理由ができたらその道しるべが必要でしょう。次章で上達の全体像と指導の在り方を解説します。
参考文献
「9things successful people do diffelently」 Heidi Grant Helvorson
「PEAK:」 Anders Ericsson
「Practice Perfect」 Doug lemov
上達の原則 北村勝朗
上達の法則 岡本浩一
アフィリエイト等広告無し無料サイト「弓道大学」編集長
弓道の理解し辛い部分を原理原則から演繹し考察します。
全国規模大会で団体優勝の経験もさせてもらいました。