射法全般

三章【弓道】<結果を最大化する練習方法>目標設定と練習デザイン

更新日:

本記事は三章あるうちの最終章になります。このページに直接来た場合は一章に戻って読み進めてください。
⇒<一章> 上達の条件と誤解 我々が取るべき立場

上達の知恵と仕掛け

前二章では「Think Globally(大きく捕えて考えて)」の部分について見てきましたが、最終章では「Act Locally(手の届く範囲で行動せよ)」にあたる部分を示していきたいと思います。

ここまででも述べたとおり、向上期の気の遠くなるような練習は上達に絶対不可欠であります。しかし、それは時に辛く、楽しくないことも多いです。その中でも持続的な集中力を発揮し、意欲的に練習しなければならないのです。

ここでは質の高い練習を続ける仕掛けを作り出す、その知恵を手に入れてもらいたいと思います。

▼目次

1.ただ練習するだけではダメ
2.目標を正しく設定し、デザインする仕掛け
2-2.目標を設定する
2-3.目的に流派意識を持つ
2-4.無意識にできるまで身体に覚え込ませる
3.気づきを誘発し、練度を上げる
3-1.フィードバックを充実させる
3-2.熱意で巻き込む
3-3.身体イメージの育成による気づき
3-4.まずやってみるべき練習思考法
4.成長Phaseと発揮Phase
5.マインドの持ち方
6.スランプ時

ただ練習するだけではダメ

ここでは、三時期のうち向上期です。もはやただ練習するだけで楽しいという期間は過ぎています。

自分のなりたい理想の姿と現実とのギャップに悩んでしまう時期でもあります。

この段階では、自分にとって居心地の良い領域を超えようとしなければ上達することはありません。漫然とした練習は変化がないのです。

単純な反復練習ををたとえ1万時間続けたとしても上達は愚か実力は落ちていってしまいます。

上達は筋トレだと考えれば概ね正しい。

最初は腕立て伏せも上手くできない、完璧なフォームは難しいし10回や20回が限度だ。でもそれが楽しいのが愛好期だった。そのままやっているだけで楽しかったのだ。

そこで、フォームはまずまずでも毎日20回の腕立て伏せができるようになったとしよう。

ここからの向上期で、毎日20回同じことを繰り返していてはもう筋肉は破壊されず強化されない。加齢と慣れと共に衰えていくだけだ。

だとしたらどうするか。

それは自分のできない課題を見つけ、それに向かって挑戦し続けるほかない。

挑戦を実現させるにはとにかくやり続けることではなく、やり方を変えてみるという考えにシフトすることだ。

同時に自分を「心地よい停滞」から少しだけ外に置き、ミスをしてフィードバックし修正する。適応と成長を促していく。

腕立て伏せで言えば、手の幅や位置を変えてやってみる。片手でやる。重りを背中に乗せる。あるいは20回を30回にするということを意味します。すこしだけやりすぎることが重要になります。

これらの手段は目的があって選定するべきなのはお分かりでしょう。

目標を設定したら次から次へと自分を「少しだけできない」でも「もう少し練習してみればなんとかできそうだ」という状態に置くことに重点を置いていかなければなりません。

しかし、それは変化を嫌う性質を持つ人間にとって不快であり、継続は難しいことです。間違える、失敗することは良いことですが普通は抵抗感もあります。

そこで知恵と仕掛けを活用して自分を動かすシステム作りをしていくというわけです。

目標を正しく設定し、練習方法をデザインする仕掛け

目標を設定する

まずは目標を設定しましょう。

目標を達成できるかどうかは目標の立て方次第で変わってきてしまうためとても重要です。

ここでは動機を元に目標を具体的に設定し、期限をつけ、計測可能(フィードバック可能か)を確認することがとても重要なプロセスとなります。

また、実行計画に書き込んだ予定は具体的で、予定が精密であるほど実行される可能性は3倍に高くなると研究が示しています。(AのときBする、といった条件的行動を習慣化できるようになるためです。)

目標設定のためのTen step

①あなたが「こうなりたい」と思うことはなんですか(動機目的)。(ただし、肯定文を必ず使う。~したくないという動機は不可)

②そうなったときあなたにとってそれはどれほど価値がありますか。

③そうなりたい目的のために達成するべき条件(目標)を書いてください。(心地よい停滞から少しだけ脱出する)

④その目標をいつまでに達成することができますか

⑤なぜ、その目標は現在達成できていないのでしょうか。問題点を書いてください。

⑥それではどうすれば、その目標を達成することができるでしょうか。手段を書いて下さい。

⑦6で答えたことについて具体的に手順を決めてください。どういう行動をすればそれが実現しますか。

⑧あなたは実際にそれを実行することができるでしょうか、具体的に計画、コスト、リスク、価値、実現可能性、意欲を考慮してみてください。

⑨実際にカレンダーに記録してみてください。

⑩目的および目標が「具体的」「計測(フィードバック)可能」「期限付き」であるかを確認してください。

これら10の項目にじっくり時間をかけて取り組んでいくことでやるべき事が見えてきます。

何か自分の理想と現実のギャップが発生するたびにこの目標を立ててみてください。

目標は長期と短期で2つ立ててみると見やすくなります。

 

多少解説を挟みます。...

動機はなんだっていいしその意義もなんだっていいものです。

モテたいでも認められたいでもいいです。高尚な理由である必要などありませんし純も不純もありません。

自分にとって価値があればそれが正解ですからそれを正直に確認してください。

やっているうちにあとから理由は沢山増えてくるので安心して立ててもらって構わないと思います。

動機に対する目標の設定、問題点の発見、手段の選定については知識がなければ難しいこともあり苦労します。

解剖生理や物理の知識なしに投げやりに手段を選定することは得策ではありません。

そういったときはコーチの力や書籍などが必要になってきます。

しかしここで間違えるべきではない点は、コーチは目標に沿った知識を提供するのみであるという点です。

指導を受ける際は「自分は何を目指すか。自分は何をやってみたかor何を知っているか。自分が知りたいことは何か。」の三点を明確にしましょう。

特に何を目指すかという点が欠如して、ぼんやりとしたものに向かって指導を受けている場合が多く見られます。

目標に沿わない手段は時期不応と同じく、ノイズになってしまいますので不利益になる場合もあるため、的確な指導を受けるために流派等の表明を推奨したいと思います。

私が作った目標設定シートをダウンロードできるように貼り付けておきました。
是非とも活用して下さい。シートの記入例も添付しておきました。ここにも重要なエッセンスがあります。(内容はギャグです)
⇒目標設定のためのTen step

目標に流派意識を持つ(別章参照)

弓道には流派が付き物です。道具の選定から八節の内容までかなり差異が出てきます。

自分の理想、目的を達成するための条件を設定する時にどの型を目指すか、というのが流派に相当します。

流派は過去の先人達が築いてきた射法の集大成ですから利用しない手はありません。(言い過ぎですが別章参照)

自分の理想、目標を一つに絞ることができれば道具も決まって道筋が明らかになりやすく、もちろん上達も早くなります。

早く上達はしたいけど我流でやる、というのは数百年の歴史を一人で構築せねばなりませんから当然不合理になります。

目的の差はあれど流派に優劣はありませんから一つの流派が絶対であると考えず多様な中から1つ選んでもらいたいと思います。

唯一やってはならないことは流派を混在させることです。同じ意味で、目標をコロコロ変えることも忌むべきことでしょう。

それはさきほど述べた目的に沿わない手段となってしまいますし、時には真逆の射法や道具が体に不調和を生み出してしまいます。

混在させて良い流派ならば先人達は既に混在させているはずですからいきなり素人が創造性を持つ意味はありません。

無意識にできるまで身体に覚え込ませる練習

これは二章でも少しお話しました。

無意識に運動できることにより、さらなる創造性を生み出すことが出来ます。

気づきを得ることと身体に覚えさせること、2つを意識して練習を組み立てると良いということです。

既に身につけた断片的スキルを統合するための目標をその都度設けるのも大事なことです。

気づきを誘発し、練度を上げる

フィードバックを充実させる

練習の質を考えるうえでフィードバックを受ける仕組みを作ることは必須となってきます。

そうでなければ何が良いかも悪いかも全く分からないままやみくもに練習を続けることになってしまいますから

フィードバックはどのような頻度で何によって受けるかをスケジューリングしていくことが大事になってきます。

射形が安定していない初心者のうちはフィードバックは少なめに、安定してからはこまめにフィードバックを受けるようにしましょう。

安定しないうちは何度もフィードバックを受けると迷いが生じてしまうため少なめにし、自分の意志で射形をコントロールできるようになれば高頻度で受けることが上達の近道となるでしょう。

フィードバックの手段としては

動画を撮って目標と比較する

「師」に見てもらう(誰でもいいわけではない)

腕力で引けない強い弓を引いてみる(故障に注意する)

試合に出る

矢所を記録したり小的を使う

が挙げられます。(私が製作した記録シートを張っておきます。⇒矢所記録シート

無意識のクセや弱点の発見につながることが重要となります。

熱意で巻き込む

本当にやりたいことだと決められれば自ずと熱が入ってくるでしょう。

熱意は何事にも代えがたい財産ですから、自分の両親や教師たちもこれは本気だと分かればもちろんサポートしてくれるはずです。

上達にはできるだけ練習時間を確保することが必要ですから、周りの支援が必要になります。

多くのトップアスリート達は自宅で練習できることが大きな成長を生んだと口をそろえて言います。

周りの環境を熱意で巻き込んで作ることでさらに上達を加速させることができるわけです。

他にも

ライバルを活用する:同じ力量の相手がいれば高めあい、相手が恪上でもハンデ戦を持ちかけましょう。お互い良い刺激になります。

師を選んでマンツーマンレッスンを申し込む:「目標を共有できて、そこに連れて行ってくれる実績」があれば師として十分です。

身体イメージの育成による気づき

上手い人でも当たる人でもいいですが、その人は当然、「自分の身体をこう動かせばこうなる」ということをわかっています。

言うなればこれはダンスで自分の動く様子をよく知っていると言うことでしょう。あることをイメージし、記憶し、再現するためにはその周辺にある多くの反例や予備知識を持って可能となると言えます。

つまり、カンタンに言えば五胴のうち中胴をイメージしようとすれば、他四胴のイメージと知識が最低限必要だと言うことです。

体操をする

体を操ると書いて体操です。筋トレもそのひとつでしょう。

これはあらゆる動きのヒントになりますからいろんな体操をやってみることで気づきがあります。じっくりゆっくり体を操ってみます。

これを頭の中だけでもできるように練習します。それを体感覚とリンクさせることで自由な体操ができるようになります。

イメージトレーニングを活用

イメージで練習ができれば弓道場にいなくとも、弓がなくても練習ができます。実行至上主義にとってはとても大事なことです。

そこから気づきが生まれることになりますし、試したくて次の練習が待ち遠しくなります。

まずやってみるべき練習思考

何か壁にぶち当たった時、まず考えてみるべき思考法を列挙します。

・例えば○○という射癖を直したいとします。その場合○○以外はできなくてもいいから○○だけができる状況を考えてみます。

・可動域一杯ためしてみる。最大でどこまでいけるか、行きたいのはどこなのか、加減を知るにはまずフルスロットルを知りましょう。

・まず120%から始める。すぐに100%にすることはできないので大げさにやってみましょう。

・優しい条件でできるか確認する 「徒手ならできる」や「スローモーションならできる」など

・射術を分解して考える。/射術を連動させて考える。

・どこかにプライドが隠れていないか探る。変化を嫌わず柔軟に思考する。どこかに先輩としての意地が隠れているかもしれません。

・道具を知る 流派と道具の密接な関係は切っても切り離せません。道具と目的の関係を知ると見えてくるものがあります。

成長Phaseと発揮Phase

目標を試合でのパフォーマンスとしている人はいつも射型をいじくり回して成長を促していてはいつまで経っても試合で実力を発揮することはできません。

成長を第一に置いてしまうと変化は必須になりますから、安定した技術は得られません。

ですから試合で発揮するためには成長とはまた別の練習メニューでの努力が必要となります。

自分の射を安定させ、いつでも同じ射が発揮出来るようにならなければなりません。

このときに「体の技」とは別の「精神の技」が必要になります。

このとき二つのPhaseは完全に分けて考えなければブレが出てきてしまい、安定した射術の実現は難しくなってきます。

逆に、この二つを明確に区別することで「調子」という曖昧な概念を捨てることができます。

成長Phaseは少しでも気づきを得ることに集中し、大胆に射術改造に取り組む。

発揮Phaseは徹底的に自分に技術を定着させる。イメージを重要視し、イメージ通り引けているかどうかをフィードバックする。また精神生理について理解する練習をする。

※本番で新しいことはできない。出来ることを思い出すのみにする。

マインドの持ち方

楽観的で謙虚に

上達が難しいことであるという認識と、熟練者を尊敬するという姿勢は大事です。難しい事だと知ることで成功の可能性も高まります。

ですが、自分にはできないとは思うこととは別です。絶対に自分にも出来ると思うことはやはり目標達成に有利に働きます。

難しすぎない目標をたて、小さな成功体験を積み上げることが一歩一歩進むことになり、モチベーションの維持につながります。

その過程を楽しめるようになることが練習では最も良い精神状態と言えるでしょう。

いくつか注意することを挙げておきます

1.マルチタスクにしない ー まずは1つのことから始めると、目標達成率は上昇する調査があります。

たぐりを直して手の内を直して早気を直して、.....では続きませんしどれも達成できない可能性が高まってしまいます。

2.道具収集やノウハウ収集に情熱を注ぎすぎない

道具収集は快楽の極致です。これは通常、的に当てるよりも楽しいとも言われていますから上達の障害となることも多いです。

のめり込みすぎて練習の時間がなくならないよう注意しましょう。両立させたい場合は制作者になるのも手でしょうか?

スランプ時

スランプなど自分の力が以前より低くなったと感じるとき、人はかなりの確率でやる気を失ってしまいます。

これ以上は自分には無理だったんだ、と思ってしまいがちだからです。

しかしそのとき思い浮かべなければならないのは

「まずこの不調は一時的な物であると確信すること」

「以前の自分の実力に復調するまでまず続けてみること」です。

また一章に戻って、天才はおらず、才能は誰にでもあることを再確認していただきたいと思います。

できないことではなく、今でも自分に達成できることから目標を立てていきましょう。

反対に、3ヶ月前の自分と比べて

想像しなかったような射をしている
以前よりワクワクしている
いい方向に変化していくイメージがある

という人はとてもいい流れにありますから、心配の必要はありません。

三章、長かったですが読んでくれてありがとうございました。

読み終えて「よし、やるぞ」と思ってくれたら嬉しいです。

いろいろな言葉選びに気を配って書いていますので読むたびに気付きがあると思います。心尽くしの知恵を是非自分の物にして下さい。

明日は忙しいからいつかやってみよう!と思った君にこの言葉をプレゼントしましょう。

「人が変わるには、付き合う人を変える、住む場所を変える、生活の時間配分を変えるのどれかでしか成し得ない。最も愚かなのは決意を新たにすることだ」

大前研一

人は意志では変わりません。人間の意志が弱いのは当たり前ですから行動と環境整備で変わりましょう。ノウハウコレクターにならないよう是非やって頂きたいと思います。

ここに書いたことは誰でも理解できますからとにかくあとは実行するのみというわけです。小さい階段から少しずつ上っていきましょう。

それではこれで終わりにします。

下にSNSボタンがあるので気に入ったら感想をシェアしてみて下さい。とても励みになります。

参考文献
「9things successful people do diffelently」 Heidi Grant Helvorson
「PEAK:」 Anders Ericsson
「Practice Perfect」 Doug lemov
上達の原則 北村勝朗
上達の法則 岡本浩一

Kou

アフィリエイト等広告無し無料サイト「弓道大学」編集長 日置流竹林派
弓道の理解し辛い部分をヨガ,座禅,解剖生理学,スポーツ心理学の知識を使って原理原則から演繹し考察する。
全国規模大会で的中9割、コーチ,選手で団体優勝の経験がある。
Twitter↓是非フォローお願いします。

-射法全般
-, , , , , ,

Copyright© 弓道大学 KYUDO UNIVERSITY , 2020 All Rights Reserved Powered by STINGER.