さて今回は少し堂前のお話。
前の投稿から時間がたってしまいましたがいつのまにか当サイトも月に少なくとも4000人ほどの来訪があり、累計ユーザー数は10万を超えるようなサイトとなっていました。
多くに人に読んでいただけるのは皆様のおかげでもあります。ありがとうございます。
堂前(堂射)とは三十三間堂の軒下を矢で射通す競技のこと。江戸時代に最盛期を迎え、藩の威信をかけて競われました。
このとき道具と射法の進化も最盛期となる、まさに日本の弓術の花形というべきでしょう。
愛好家ならば一度は挑戦してみたい。私もそう思う人の一人です。
さて、言うは易しですが堂射にはかなりの準備が必要です。
いずれの道具も堂前専用であり、大矢数を挑むかどうかにかかわらず調整も非常に気を遣うものばかりのようです。
なんにせよやってみなければわからない。というわけでまずは特徴的な押手弽から作ってやろうと思います。
実物はどうか
まずお手本を用意します(笑)
これは実際に堂射で使われていたものですが、造りはとても美しく当時の職人の技術には感服させられます。
二本押手に指を足したような構造です。手掌には中て革をつけ、天鼠(くすね)を塗ってあります。
手背の飾りは遊びができる構造になっており、湿気も抜くことができます。
三指にはスルメ革と呼ばれる弓の飛び出し防止機能がついています。紐を締めて指を固定する作用もあります。
造りは分かりましたがここで問題が発生しました。革です。
厚みは右手用の弽よりはやや薄めの革です。革は貴重だったため中唐なのか、使用上中唐が適していたのかは分かりませんが、厚すぎるのは具合が悪そうです。
一番の問題は色。染色技術が発達していない当時、この色は燻です。
調査したところ現在は燻といえば稲藁を用いた燻で、茶色を思い浮かべるでしょうが、古来燻は鼠色と茶色、鶯色があり、鼠色は松の葉で燻していたようです。
しかし現在は松葉燻の革を扱っているなんて革屋はありません。困ったことになりました。
白革をどうやって燻す?
無いものは無いので自分で燻すしかありません。
鞣した白革は革屋さんから購入することができます。
個人のお客で20枚以下の取引では相手にしてもらえないことが多いですが。。。
まあとにかく白革は準備できました。革屋さんはこのようにかまどの上に大きなドラムを置いて革を張り付け、回転させながら満遍なく煙を当てて燻していきますが、当然こんなものは用意できません。
弽師が行っていたという一斗缶での燻も試しましたが大きさによってうまくいきませんでした。
そこで用意した秘密兵器がこちら
このドラム缶で煙を発生させて燻しをします。なんと近くの神社の神主殿のご厚意で松の葉も譲っていただきました。
そしておそるおそる燻を実行してみたものの、当然はじめは全くうまくいきません。
色がつかなかったり、真っ黒になったり、なぜか茶色になったりと、いろいろな調整をかなり要しました。
試行錯誤の末、ようやく鼠色に燻すことができました。燻す場所の移動、数回重ねて燻す手間、両面の手間もありかなり時間がかかりました。
ついでに茶色っぽい燻革もでき、革の裏面も茶色にしてみています。
ようやく制作に
やっと材料の準備ができました。本題に入ることができます。
一つのお手本だけでなく、五つほど実物を見て構造を決めました。
それを紙型に起こして裁断し、一つ一つ手縫いで成形していきます。
今回はチビ小唐を惜しげもなく使っていきます。
まずは二本押手のような状態になります。
指をつけて
中て革をします
これが結構骨が折れます。
一番難しい手背の飾り
糸一本のみで綺麗にできました。
スルメ革をつけて仕上げ。遂に完成です。
失敗もありましたし、かなり時間を要してしまいましたが、形はかなり近いものに出来たのではないでしょうか。
色合いも品があって非常に良い仕上がりになりました。
しかし堂前に挑戦するのはいつになるのやら...
アフィリエイト等広告無し無料サイト「弓道大学」編集長
弓道の理解し辛い部分を原理原則から演繹し考察します。
全国規模大会で団体優勝の経験もさせてもらいました。
他にも今日から使える有用情報がたくさんありますので是非見ていってください。
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