どうもこんにちは、Kです。
今回は弦について紹介していこうと思います。上級者向けの記事になります。
皆さまは弦を選ぶとき何を見て選んでいますか?正直言って明確に説明できる方は非常に少ないと思います。
ほとんどの方が「おすすめされたから」「弦音がいいと言われた」「色の好み」などで選んでいることでしょう。
弦は弓、矢、弽などの主要な弓具選択に比べて優先度は低いものであることは間違いありません。しかしながら弦は実際に矢を飛ばす重要な弓具で性能にも差があり、選択や使い分けがあるのも事実です。
弦の性能
まず、弦に関して求められる性能は以下のようなものがあります
①弽溝から問題なく滑り出て、矢筈に安定した推進力を伝達し、エネルギー効率が良いこと
正確に矢を飛ばすには、弦の素材が均一であり、一様に伸縮したほうが有利です。
伸縮性にムラがあったりすると、矢に与える力の方向が安定しません。
また、弦の性能というよりは中仕掛けの問題ではありますが、均一できつすぎず緩すぎない仕掛けは非常に重要になります。
②一定以上の範囲において伸びにくいこと 切れにくいこと
弓把が1本ごとに変わっていては同じ矢飛びは得られません。
しかし、一切伸びないものが最も良いかというとそういうわけではありません。
素材や縒り方による伸び方の違いは、肩味や離れの瞬間的なインパクトに対するクッション性を変化させ、射手の技術と感覚に影響を与えます。
また同様に50本ごとに弦が切れていては弦の伸縮や個体差に悩むことになります。
何本射るのに耐えられればいいのか、という明確な決まりはありませんが、現代の一般的な競技環境では最低でも200~500本くらいは切れずに引けたほうが有利でしょう。
③適切な重さであること
軽いほど離れでの弦の復元速度は速くなり、矢速も向上します。
しかし軽ければいいわけではなく伸び方と同様に射手の技術と感覚に影響を与えます。現在は弦のサイズ表記が号数表記ですが、重さを量ることが重要です。
また、細すぎる弦は弦をかける弓弭を変形させる原因になります。
余談ですが同様に、硬い弦であればあるほど弓弭を変形させるため、竹弓など柔らかい弓弭に硬い弦を使うと割れが起きることがあります。
④材質の劣化が少ないこと
ほとんどが屋内での試合である以上実際に影響があることは少ないですが、直射日光や湿度等により素材の劣化がないほうが安定性が高いことになります。
弦の素材
弦の素材と特性は下記表にまとめました。
強度は切れにくさを表し、弾性率は伸び具合を表します。
いずれも理論上での数値であり、実際に縒って製品にした時とは大きく異なるものと思います。今後の研究が待たれます。
①麻
最も古くから使われており、ケブラーの弦が登場する昭和までは麻弦しかありませんでした。
天然素材では最も強度が高い繊維ですが新素材と比べてしまうと見劣りしてしまいます。湿潤条件ではむしろ強度が増す特性を持っています。
②ケブラー (龍鳴、金龍、正弦、千本弦、よいち弦、神龍など)
歴史が長く、実績のあるアラミド合成繊維。
最新の繊維に比べて強度は劣るものの、適正使用の弓力から外れない限り大きな問題はない強度です。
伸びやすい部類の弦です。
③テクノーラ(飛翔、ヤマト、ひのくに弦)
ケブラーよりも強化されたアラミド繊維で切れにくさを実現しています。
伸びやすい部類になります。
④ザイロン(天弓弦、光、吟など)
いわゆるスーパー繊維、樹脂繊維。
アラミド繊維よりも非常に強い強度を持ち、伸びません。硬いために弦音が高い音階となるとよく言われます。
適正な太さで使用すれば、弓道使用においては伸縮で切れることはあまりありません。切れる原因は摩擦や衝撃による部分破断(繊維の削れ)が多くなります。
⑤高密度ポリエチレン
SK60(Flex fast flight、BCY 652)
SK75(Flex dynagen、BCY 8125)
SK99 (BCY mercury)
数値を見ると切れない、伸びないのは明らかです。
何よりも注目すべきはその比重であり、軽くて非常に強いことが特徴です。
振動減衰性にも優れ、離れの瞬間~矢の分離~弓返りの停止までの時間がいずれも短くなります。
伸びやすさは繊維の種類によって異なります。いずれも現在はループ形状の弦が主流であり、弦輪の被覆も多くがポリエチレン素材です。
◎製法上の違い
これらの繊維素材の違いに加えて、その縒り合わせ方、コーティングの状態、そして弦輪の加工法によりそれぞれの特色があります。
同じ素材でも全く感覚が異なることすらもあります。
また、2種類以上の素材を混紡して作る弦もいくつか発売されています。
何をもって自分に合っているとするか
自分に合っている弦はどれなのか、明確な基準はもちろんありませんが、昔から言われていることとして離れのタイミングの問題があります。
延び合いの時間、そして離れてから弦音が鳴って、的中音がする、これが小気味よいリズムになるようにすること。
傾向として延び合いに時間がかかる場合は重めで復元の遅いやや伸びる弦を用いることが多いです。
そして離れのインパクトの瞬間の振動、これを我々は打感と言いますが、これが手の内の反応と合致することを目安とします。
もう一つは矢の動的スパイン調整目的に弦の重さを変更することもありますが、基本は矢のシャフトサイズの変更を優先し、補助的にしか使用しません。
また、残念ながら弦音の音階や大きさで弦を選ぶことは決して良いことではありません。
というわけで今回は上級者向け弦の選び方でした。議論を呼ぶところもあると思います。
記事中の誤りや議論はお問い合わせ等から是非ご指摘ください。
また、他にも今日から使える有用情報がたくさんありますので是非見ていってください。
アフィリエイト等広告無し無料サイト「弓道大学」編集長
弓道の理解し辛い部分を原理原則から演繹し考察します。
全国規模大会で団体優勝の経験もさせてもらいました。
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