今回は早気の矯正についてさらに深く紹介していきます。編集長です。
今回は技術的な面を重点的に記載していきます。ですが、早気は技術からなるものではありません。
早気は初心者にはほとんど起きず、ある程度慣れてきたあたりから出てくる病だからです。
ですから必ず、精神的な方面から矯正を進めていくことがセオリーだということは知っておかなければなりません。
早気を知る
おさらいですが、早気には種類があります。
的中不安型
道具・器質型
トラウマ・恐怖型
成因や性質によって分類した4型があることは前回の記事⇒【早気にはなぜなるのかー今日から出来る早気へのアプローチ】で解説しました。
必ず前記事で自分の早気の分類型を確認してください。
自分の早気の成因を知ることは治療の前提として非常に重要です。
これを知るだけで「あ、そうだったんだ」と得体の知れない物に対する恐怖が消え、1日にして早気を克服してしまう人もいるぐらいです。
これを知らないでただ「会をもて、離すな」というのは指導とは言いません。
ついでに、自分が重症かどうかも知っておいてください。
早気治療に当たって理解しておくこと
①会が短いからダメなわけではないこと。
長さではなく伸び合いができるかどうかを言っていることは前回も述べました。
早さとは関係なく発の瞬間を自分で制御できないことは的中において絶望的に不利であることは忘れないでください。
②早気は非常に精神的要素が強い病であること。
まずは前回の記事で説明したとおり、分類型に沿った治療により原因を取り除いたり、方便で自己と対決する練習をしなければなりません。
そして早気になってからも皆から認められていない不安。自分の欲望に勝てないことによる自己の否定や後悔。
いろいろな感情が渦巻いて、意欲も失ってしまいます。程度はどうあれ、誰もがそうなります。
そうすると自信を治療する気力も失ってしまい、あとは重症化するだけです。
そのため、自分だけで解決しようと思わないことです。
早気を経験する人は70%ともいわれるほどかなり多い病です。
しかし、矯正しようと続けていれば早気の80%以上が3年以内に治癒するという報告もあります。[文献1]
ポイントは「まずこの不調は一時的な物であると確信すること」「以前の自分の実力に復調するまでまず続けてみること」です。
周りの人を巻き込んで、抱え込まずに希望をもって取り組んでいきましょう。
技術的な矯正
くどいですが、まずは自分の精神面を見つめることです。技術や道具だけで早気になっている人はほぼいません。
「自分は努力して早気の矯正をしているアピール」という逃げ道として技術的な矯正を利用していてはいつまでも同じところを巡っているだけです。
早気の人に見られるのは、総じて「苦しい形をしている」ということです。
つらい姿勢はそれだけで焦燥感を生み出し、早気を誘います。
①重心が爪先側にある
②肩が上がっている
③胸に息が詰まっている
④息を吐ききっている
①重心は前過ぎると安定性が失われてしまいます。(後ろ過ぎても同様ですが、あまり後ろ過ぎる人はいません)
当然ですが、不安定な部分は筋肉で自動的に補おうとしますから辛くなります。
矯正法としてはまず壁に向かって立ち、両爪先を壁に合わせて足踏みし、腰、胸、頬骨を壁にぴったりくっつけます。
やればわかりますが、重心は前にはいきません。この状態が脊椎のS字を保っている状態ですから、重心を覚えて爪先に壁があると思って引いてみましょう。
②特に左肩が上がっている人が多いです。
弓手先を下におろそうとしてしまい方が上がってしまうこともあります。
左肩の安定性は肩を的に押し沈めることによって得られます。
③胸郭が持ち上がっている状態です。重心にも関係しますので、①のように壁に向いて立ってみるとわかるかもしれません。
呼吸は腹に力を入れて胸は抜いてしまうようにします。息をいっぱいに吸って会に入ることも良くありません。
④会に入ってからは伸び合いという大事な仕事がありますので、そこですべてを吐ききってしまっては苦しくなります。
あえて苦しくしてしまう方法もありますが、大三までで吸い込んだ後、引き分けで半分吐いたところで会に入ると丁度よいと思います。
引き分けの後半が長すぎて息が持たないような人も見かけます。引き分けの前半と後半は同じリズムで引くことを心がけます。
また、技術的な問題というのは早気の「道具・器質型」に属すと言ってもよいので、弓力を調整することや、弽の状態を見ることも時により必要になってきます。
手先ばかりに力が集まってしまうと苦しくなりがちです。
方便
もうひとつ、方便を挙げておきます。
それは遠的です。
実は遠的は会を伸ばすことができる形式です。
人は標的への距離によって会の長さ、残身の止め、長さのリズムを無意識に取っています。
距離が長いと会も残身も長くなります。それを利用して遠的で会を伸ばすことに専念します。
遠的では失敗すると矢を壊すリスクもあること、また弓手を下げなくていい分、左肩が上がりにくくなり伸び合いを感じやすくなります。
矯正中の諸問題
ビク
早気の治療中に起きるビクは後遺症のようなもので、「しっかり持って離してはいけない」という意識と「離そう」という反射の衝突から生まれます。
見た目上早気ではなくなっていますが、当然伸び合っていませんので秒数だけで意味はありませんし、結局は緩みです。
慣れるうちに消えることもありますから気負い過ぎないでやっていきましょう。
ついでに:もたれ
的中不安型とトラウマ恐怖型の発症ケースが存在します。
離すことに不安や恐怖がある場合、もともとの考え方の違いによってゆるめて早く離してしまう早気タイプと離さないでいるもたれタイプが居るということです。
道具型もありますがもたれの発生には上記の精神的要因が大きく関係します。
恐怖がないもたれは早気より会がある分いくらかマシですが最終的な目標はやはり伸び合いができるようになることでしょう。
道具の問題を取り除いたうえで、これもまた自分の精神面と向き合っていくことは早気の治療と同じです。
会で歩き出してしまうような重症の場合は三章の「まずやってみるべき練習思考」から治す方法を模索してみてください。
それでは今回は技術面に着目した早気の矯正法を紹介しました。
早気は弓道の中だけの病です。弓を持たなければ起きないことも知っておいてください。
そんなに思いつめないで、弓がすべてではありませんから、ほどほどに頑張ってください。
また、他にも今日から使える有用情報がたくさんありますので是非見ていってください。
参考文献
[1]森 俊男ら1990[弓道 における 「早気」に関する研究]
アフィリエイト等広告無し無料サイト「弓道大学」編集長
弓道の理解し辛い部分を原理原則から演繹し考察します。
全国規模大会で団体優勝の経験もさせてもらいました。
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