弓道でしばしば語られる「回内・回外」という言葉。
しかし、これが肘の運動として説明されている場合、解剖学的には不正確である。
回内・回外は本来、前腕の運動を指す用語であり、橈骨と尺骨の回旋によって手のひらの向きを変える動きである。いわゆる「手のひらを返す」運動がこれに該当する。
一方で、肘関節そのものは蝶番関節に分類され、基本的には屈曲と伸展、すなわち曲げ伸ばしの運動のみを担う構造である。
したがって、「肘を回内する」といった表現は、厳密には成立しない。
弓道で言われる「肘を返す」「捻る」といった動作の実態は、肘関節そのものではなく、上腕骨を介した肩関節の回旋運動(内旋・外旋)によって生じているものである。
このあたりは解剖学用語と現場用語が混在しやすく、直感的に使われてしまいがちだが、用語の取り違えは動作理解の混乱を招く。
場合によっては、意図と逆の意味で伝わってしまうこともあるため、言葉の使い方には注意が必要である。
同様の文脈で用いられる語として「肘入れ」「腕入れ」がある。